不動産指標

不動産の指標公式を利用する前に
それらを用途別に三分類しておくと
非常に覚えやすく、理解しやすい。

(その1)指標計算の分子に使う基本用語二つ
●キャッシュフロー(別名は営業後現金収支)
 課税所得−所得税−返済元金+減価償却費で求める
※課税所得とは
 不動産収入―返済利息―運営管理費―固定資産税―減価償却費
※お金のある人は不動産を購入するとき自己資金で払う。
 この場合、銀行への返済元金も返済利息もないので
 キャッシュフローは限りなく賃料に近づく。
 所謂、あの羨ましい、生まれながらの地主さんは
 それに近い状態で、毎日楽しく過ごしているに違いない。
 それに引き換え、多額の借金でスタートしている
 我々のようなチャレンジャーはキャッシュフローが低く
 収益を上げるために自分でアパートの掃除をしたり、
 滞納家賃の催促をしなければならない。
  
●NOI(別名はネット営業収入)
 不動産収入―(管理費+固定資産税+その他諸経費)
※営業利益であって経常利益ではないので
 減価償却費や所得税、ローン返済額を絡めない。
※Net Operating Incomeの略。
 Netは「正味の」、Operatingは「営業の」、Incomeは「収入」
 
(その2)不動産別投資指標三つ
個人の財務状況などと関係なく、不動産そのものの投資指標。
●表面利回り(別名はグロス利回り、単純利回り)
 不動産収入÷物件価格
※ここでいう不動産収入は実質賃料収入でなく
 満室時想定賃料収入である。
※この数字は不動産業業者が素人のお客さんに
 物件を薦めるときに使う彼らにとって都合のいい数字。
 ただそれだけの意味しかない。
 私はこの数字が10%以下の物件は相手にしない。

●実質利回り(別名はネット利回り、純利回り)
 NOI÷(物件価格+取得費用)
※取得費用とは、仲介手数料+不動産取得税+登記関連費+印紙税
※実質利回りは個々の不動産の収益性を正しく把握するのに便利。
 多くの場合、表面利回りより2%くらい低くなる。
 損益計算上はものすごく大きな違いで
 この数字を出す必要性はよく分かる。

●キャップレート(別名は収益還元率)
初年度期待営業収入÷不動産の市場価格
※その土地で何をするか、どのくらいの収入を見込むかは
 投資家によって数字が異なってくるので、不動産別指標でなく、
 個人別投資効率として分類する人もいる。
 また、市場価格も投資家によって見積もりが変わることがある。
 そのようなことから、日本ではあまり普及していない指標の一つ。
※Capitalization Ratioの略。
※埼玉でキャップレートが10%期待できる物件と
 東京で5%しか期待できない物件があったらどちらを取るか?
 一般的には空室率の低い場所ほどキャップレートは低くなるが、
 安定的経営が出来る可能性は高まってくるメリットもある。
 埼玉のカリスマ大家のSさんは特殊な才能で
 あの田舎で低い空室率での経営をしているが、
 普通の人にはその真似ができない。
 キャップレートという指標の難しい一面だ。
※横浜市金沢区のKさんは関東学院大学の学生相手にマンションを
 何棟も建て、高利回りの不動産経営をしている。
 成功者は何か自分の得意の分野を開拓していることが多い。

(その3)個人別投資効率指標一つ
不動産の投資効率は、個人の財務状況により変化する。
それを考慮して計算した個人別の投資指標。
●CCR(別名はROE、ROI、自己資金配当率)
 キャッシュフロー÷自己投下資金
※銀行にお金を預けるときに預金金利を気にしない人はいない。
 でも、そんな金利よりも何十倍もいい不動産投資に
 関心のない人が多いのは非常に不思議だ。
 株の世界で使うROE(株主資本配当率)に
 相当する指標で、日本語では自己資金配当率という。
 つまり自己資金の利回りで、自分の使ったお金が
 1年間に生む利益の割合を百分率で表したもの。
※Cash on Cash Returnの略
 
関連豆知識:例題でそれぞれの指標を求めてみよう。
(想定条件)
年間賃料360万円      借入れ利率2.5%の20年ローン 
物件価格3600万円(土地50坪付き築10年の軽量鉄骨アパート)
年返済額192万円(その内と当初の利息分72万、返済分120万)
自己資金780万円、銀行借入れ3000万円、所得税率20%
(諸経費)
委託管理費18万円、仲介手数料114万円 、固定資産税20万円
登記関連費29万円、司法書士報酬10万円 、不動産取得税25万円
印紙代など約2万円、所得税率20%    、年間減価償却80万円

上記の条件で次の指標を求める。
①キャッシュフロー(営業後現金収支)
 先ず課税所得を求める。
 不動産収入―返済利息―運営管理費―固定資産税―減価償却
 (   )−(  )−(   )−(   )−(   )
 次にキャッシュフローを求める。
 課税所得−所得税−返済元金+減価償却費
 170万円−( )−(  )+(   )
 年間のキャッシュフローは96万円で月額なら8万円。
 一戸月75000円のアパートなので、約一戸分が毎月浮く物件。
 所得税は課税所得の20%なので34万円を代入しましたよね。

②NOI(ネット営業収入)
 不動産収入―(管理費+固定資産税+その他諸経費)
 (   )−(18万+20万)
 322万だが、諸経費として毎年22万円を使うならば300万円。
 今回は322万円としておく。

③表面利回り(別名はグロス利回り、単純利回り)
 不動産収入÷物件価格
 (   )÷(   )  
 で、10%になる。

④実質利回り(別名はネット利回り、純利回り)
  NOI÷(物件価格+取得費用)
 ( )÷(3600万円+180万円)
  で、約8.5%となり、表面利回りとはかなりの差が出る。

⑤キャップレート(別名は収益還元率)
 投資家が自分の調査で、稼働率を95%と想定し、
 その物件の市場価格を3600万円と考えると
 初年度期待営業収入÷不動産の市場価格
 342万円  ÷ 360

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