不動産業に限らず、仕事には失敗がつきものだ。
その失敗が「騙し」に起因したときは
本当に残念で、悔しい。
そんな失敗を振り返ると
そのほとんどは取引相手が初めての人だった。
騙すといっても、罪になるような騙しから
罪にならない騙しまで幅が広いのだが・・・
築28年のビルの防水工事でのことだった。
当時はちょうど築15年目で、屋上は大分傷んでいた。
当然、いつも付き合っている工事屋から見積もりを取った。
そして、定石としてもう一社見積もりを取ろうと考えていた。
そんな折、日経新聞の「防水新素材開発に成功」という記事が目にとまった。
商品の開発をしたのは埼玉大学の〜教授だという。
そして記事の最後に、その商品の問合せ先が書いてあった。
すっかり信用して、その会社に問い合わせをし、見積もりを取った。
安かった、段違いに安かった。これで決まりだと思った。
でも、心配だったので、「やった現場を見せてくれ」と頼んだ。
「できれば一番古い現場を見せてくれ」と頼んだ。
もちろん、オーケーがでた。
しかし、当日になり、急に工事が終わったばかりの現場に案内された。
確かにやったばかりなので綺麗だった。
「やったばかりの現場なんてどこでも綺麗に決まっている・・・」と
ちょっと引っかかるものは感じたが、勢いで発注してしまった。
新聞で知っただけの見ず知らずの業者に・・・
(ここが一番気をつけるべきところだった)
工事は見事に美しい仕上がりだった。
それでも、用心して1ヵ月してから110万円を支払った。
そして1年が経った。
塗った直後は綺麗だった塗膜はぼろぼろになった。
一体何を塗ったのだ、やった意味は全くなくなった。
はらわたが煮え繰り返って、工事業者に電話をした。
「この電話は使われておりません」という空しい声が返ってきた。
まさかこんな業者の広告を天下の日経新聞が掲載するとは思わなかった。
そのとき、これからは、どんな大新聞も信用しないと心に決めた。
だから、その後、日経で見た近未来通信の記事にも騙されなかった。
あのもっともらしい募集記事にちょっとは心が動かされたのだが・・・
この経験がなかったら、この近未来通信に何千万と投資したと思う。
(その意味では110万は転ばぬ先の杖になったとも言える)
私の友人は相続問題を依頼した弁護士に何億と騙された。
当時20代だった彼には知り合いの弁護士がいなかった。
だから、友人から紹介された初対面の弁護士にお願いした。
(若い友人の紹介って結構危ないことが多い?)
そして、巧みに仕組まれた芝居の中で、違法行為でなく騙された。
彼の相続税はその年の神奈川県でもビッグ3に入るものだった。
だから、相続税を払うためにかなりの土地を売らなければならなかた。
49日の法要が終わって間もなく一人の不動産屋が彼を訪れた。
「お父様の持っていた土地を相場より高く売ってください」と。
タイミングよく、願ってもない話を持ち込んできたのだ。
何でもその土地にぴったりの商売を始めたい人がいるからだという。
そこで、彼はその話を弁護士に伝えた。
「その不動産屋は知らないけど、いい話だね」という返事だった。
弁護士が言うならと、不動産屋に承諾の電話を入れた。
それが縁で、彼はその不動産屋に数億の土地の仲介を頼んだ。
それから、数年して、売った土地の登記簿謄本を見る機会があった。
そこには、驚くべき履歴がずらずらと書かれていた。
そう、彼が売ったあと、その土地は5回も転売されたのだ。
そして、また、彼は最初に現れた不動産屋が
彼の依頼した弁護士とつるんでいたことも知ってしまった。
結果、彼は本来なら3筆の土地を売れば税金を払えたのに
6筆も売らなければならないくらい安く処分したことにも気付いた。
「これじゃ、まるで地面師じゃないか」
でも、全ては後の祭りだった。
人を見るには、最低10年の観察期間は必要だ。
だから、若い人の知り合いほどあてにならないものはない。
そう、若い故に、付き合いの短い人を紹介してくる訳だから。
もちろん、紹介する本人には悪気はないのかもしれないが・・・
しかし、とんでもない人間を紹介され、
損害を蒙る方はたまったものではない。
大切なことだから、もう一度言っておく、
「若い人の紹介するその知り合いと
新聞などで知った初めての人は当てにならない」と。
善人・悪人の判別ほど難しいものはない。
関連豆知識:地面師
土地や建物などを詐取する詐欺師のことを地面師と言う。
日ごろから詐欺の研究をしているプロだから、
素人が遭遇したらひとたまりもない。
危ない世界に近づかないことが最善の策だ。
不動産詐欺は大別する2通り。
①大金を払っても家や土地の権利が手に入らない
②家や土地の権利が手に入っても払った金額に見合わない価値しかない
また、売る場合には土地に見合った金額が手に入らない。
その原因は
①建物や土地の相場を理解していない
②不動産登記の登記事項証明書を確認しないとか、権利書、仮登記と本登
記の違い、抵当権、公図などといった不動産専門用語を理解していない
③間違った意味での自信家(先生と呼ばれる人ほど騙されやすい)
対策は、
①お金を惜しまず複数の専門家に相談する
②日ごろから不動産に詳しい人を友達にしておく
③日ごろから謙虚に生きる。
④学歴や見てくれで人を信じない。
写真説明:壁面デザインが上手な家を見ると
すぐに写真を撮ってしまう。
壁面を全てタイル張りにすると
どうしてもしつこくなるので
こんな風に「抜き」を作るのが好きだ。