地価格差

今や、日本は人口減少国。
その減少スピードとそれが経済に及ぼすインパクトは
我々が想像する以上のものになる筈だ。

2000年の日本の人口を100として
2030年に100を上回っている県が11ある。
首都圏の1都3県はもちろん入っている。
だからといって、神奈川県内なら
どの市町村でも増えるという訳ではない。
神奈川県で人口が増加していく市町村は
たったの9市町村である。

土地価格が上昇するには
① 住む人が集まる
② 買い物客が集まる
③ 観光客が集まる
④ 工場やオフィスが集まる
⑤ 金・情報が集まる
などの要素が満たされなければならない。

①と②は当然人口と直接結びついている。
だから、不動産ビジネスで成功するには
人口動態を常に意識して動かなければならない。

関連する60〜70平方メートルの賃貸マンションの賃料を
東京都中央区と横須賀市と鎌倉市で比較した。
横須賀市は米軍関係者になら15万、日本人になら11万
東京都中央区は30万、鎌倉市では13万になっている。
友人の持つ三浦市だと一桁の8万円だ。

都心部はキャップレートが下がっているので
賃料だけからどこが一番いいとは決められない。
ひょっとしたら、一番いいのは横須賀市中心部かも知れない。
もし、2030年までこの賃料が維持できればいいのだが・・・

大学時代、運良くまとまった金を作れたので
大学卒業と同時に横須賀市ハイランドに家を建てた。
坪6万円、45坪の土地の上に。

日本は高度成長の真っ只中にあった。
その3年後、京急長沢駅の近くへ越すためにその家を売った。
なんと坪42万円に値上がりしていた。

あれから約30年。ハイランドの人口は減っている。
今、ここの土地はあの頃と同じ40〜50万円くらいだという。
地価が3年で7倍になった高度成長期は遠い昔のことになった。
バブル期、坪150万円になったこともあったのに
下がりに下がって、今は30年前と同じなのだ。
思い出多きハイランドはいつの日かまた森に戻ってしまうのか。

同じ横須賀でも駅の近くはしっかりした相場が維持されている。
品川から1時間の北久里浜の駅近くなら坪100万はする。
上大岡なら坪150万から250万は固い。
多くの人がより便利なところに移動し始めているのだ。

こうして同じ神奈川県内でも地価格差は日増しに激しくなっている。
団塊の世代が集まって住んでいる団地には空き家が目立ってきた。
これからの不動産市況はかなり難しい局面に入っている。

もちろん、土地値の物差しは単に駅からの距離だけではない。
超不便な三浦市の三戸浜海岸は坪80万もする。
そう、サンセットの景色が最高だからだ。
箱根も景色のいいところは随分と値上がりした。
特色があり、希少価値があればしっかりとした価格が維持されている。

こうして見ると、不勉強な人には過酷な社会になってきた。
景気や地価に無頓着な人は不動産に関しては報われない。
景気と土地はあらゆるビジネスの基本なのだから。
これが正に情報化社会が格差社会と言われる由縁なのだろう。

今や、東京から2千キロ以内の都市には羽田から飛び立てる
上海、台北、北京、ソウルは羽田からの出発が可能だ。
そう、これらの都市は日本の地方都市とも考えられる。
石垣島空港と等距離の都市は国内扱いとは壮大で面白い。

こうしていろいろな情報や統計を基に
不動産業を大きなスケールで考えると
実に面白い世界が広がってくる。

関連豆知識:キャップレート
キャップレートとは、投資不動産のレント収入から維持管理費を引いた
純操業収入(税前、ローンなどの支払前)を売買価格で割ったもの。
百分率で表示し、還元率ともいう。地域による相場を比較するのに便利。

例えば年120万円(内20万円が維持関連費)の操業収入のあるアパートが
1千万円で売買されているならそのキャップレートは10%となる。
貸家、オフィスビルなどキャッシュフローを伴う物件を買うときに使う。
アメリカでは、キャップレートをもとに交渉するのが基本。
このキャップレートの相場をはずさない限り大きな失敗はない。

しかし、本文でも触れたとおり、観光地や高級住宅地の地価は
キャップレートでは把握できないことを忘れないで欲しい。

写真説明:開発が続く上大岡駅周辺
     既にAゾーン、Bゾーンが完了し
     再来年3月にCサウスが出来上がる。
     更にCノース、鎌倉街道沿いのDゾーン
     と青写真があり、開発を待つ空き地を見ては
     夢を膨らませている。

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