地価の急激な変動

たった2年前の私のブログには土地の高騰で
容易に土地が手に入らなくなったと書いてある。
もちろん、今は土地の大不況。
既に2年前の7割前後になっていて、完全な買い手市場だ。

我々が土地を買うときの物差しは「路線価」と「収益性」
路線価とは相続税を計算するとき用いるために決められた
主要道路に面した土地の価格で、年に1回発表されている。
一般的に不動産屋は銀行から借金をして土地を買うのだが、
お金を貸す銀行はこの路線価の1.5倍までの融資額を考えている。

ブログに書いたのは、2年前の平塚での事例だ。
売値が9900万円で坪単価は180万円という土地が売りに出た。
見た目は最高の土地に思えたので、土地を見てから1時間後に
「9千万円の買付け証明」をその業者の事務所で書いた。
いい土地を買うときは遅疑逡巡しないことにしていたから。

事務所に帰って路線価を調べると、1?で17万円になっている。
坪に直すと約56万円。売値は路線価の3倍以上だ。
それにしても高すぎる。いくら譲歩しても2倍が限度だから、
坪120万円、総額で6600万円が路線価から分析した上限価格だ。

そこで、もう一つの物差しである収益性からも検討した。
駐車場を一括借り上げてして賃料を払ってくれる業者に
「いくらで借りてくれるか」と問い合わせした。
3時間ほどで返事が来た。1ヶ月50万円だという。
年間で600万円になる。

年10%でまわすと土地価格は6000万円、
年8%にまわすと土地価格は7500万円が妥当値。
私のように銀行からお金を借りて土地を買う人間は、
8%以下ではキャッシュフローが出なくなる。

路線価の6600万円と収益還元法の7500万円の二つを土台にして
最後に現在の相場を加味し、7700万円を妥当価格とした。
紹介してくれた業者に、「買付け価格を7700万円に変更して」と
お詫びかたがた電話を入れた。

ほどなくして電話が入った。
「9000万円以下では売らないと言っています」という返事。
銀行融資が最高に出ても5000万円くらいだから、
4000万円の自己資金を集めなければならない。
少し危険があるのでこの話はあきらめることにした。

あれから2年がたった。
用事で平塚に行ったので、そのときの業者に会った。
「どうなりました、あの土地は?」
「いやー、半年前、高木さんの買付け価格以下で売れましたよ」
「はっきり言うと、いくらなの?」
「7500万ですよ、高木さんの値付けはいつも正確ですね」
「あわてて買ったら大損したね」

やっぱり、そうだったのだ。
事業用不動産の適正な値段は
収益還元法で出した価格に収斂してくるのだ。
だから、あの土地は、今なら6000万でも買える筈だ。
とすれば10%の収益率になる。

これからの不況下で、不動産はかなり面白くなりそうだ。
(これもいつまで続くかは保証できないが・・・)

関連豆知識:収益還元法
収益還元法には、直接還元法とDCF(Discounted Cash Flow )法の2つがある。
直接還元法は、直近の一期間の純収益をキャップレート(還元利回り)で割る。
その答えが直接還元法による不動産適正価格ということになる。

DCF法では、将来の賃料収入等のシナリオ予測から純収益を出す。
しかし、DCF法は未来の予測が難しいので当てにならない点も多い。
だから、おっちょこちょいの私は、直接還元法を使っている。

また、地価の多極化、個別化を考えると純収益の出し方は更に困難だ。
住宅地であってもアパートが存在する場所ならば、
その賃料よって優劣を比較することはできる。
しかし、賃貸を前提としない住宅地、例えば、田園調布や葉山では、
購入者がそのような基準で不動産を買っていない。

だから、私は不動産の適正価値を商業地価格と住宅地価格に分けている。
商業地なら直接収益還元法で、住宅地では市場価格重視で対処するのだ。

写真説明:高層ビルから下を見ると
     つい屋根の写真を撮りたくなる。
     手入れ具合が気になるし
     その工法もためになる。

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