不動産の出口戦略(2)

私が育った横須賀の田舎町には
農業をやめて、畑にアパートを建てた人が多い。
そんな恵まれた人たちの人生を40年以上見ている。

彼らがアパートを建て始めた30〜40年前には
私も既に賃貸用建物を所有していた。
その私の建物とほぼ同じ築年数の彼らのアパートは
その多くが建替えられたか、
ぼろぼろで見るに耐えないかのどちらかだ。

一方私の建てた建物はまだ50年は大丈夫。
同じ賃貸業をしていて、この差は大きい。
なぜ、そんなことになってしまったのか。
このブログを読んでいる人は察しがついている筈だ。

そう、彼らはメンテナンスにお金をかけていない。
入ってきた家賃は全て生活費に消えたのだろうか?
賃貸経営については全て「〜ハウス」や「〜住宅」にお任せだ。
業者にすれば、建物が早く朽ちてくれた方がいい。
「海に近いから、思ったより耐用年数が短かったですね」
こんな口実で、建替えを薦めてきたのだろうか?

30年の長期借入れの返済が終わったら、建物も終わりでは
「これから返済の終わった賃貸収入で楽しい人生を・・・」
などとは、とても考えられない。

「出口戦略がないところに賃貸経営なし」とはこのことだ。
出口戦略があってこそ、「出口戦略⇒優れた維持管理⇒100年住宅⇒
豊かなキャッシュフロー⇒楽しい老後」という公式が成り立つ。

ここに20年前の中古マンションの宣伝チラシがある。
このマンションを当時購入したとすると
20年後の今、「本当は儲かったのかどうか」の答えが出せる。

チラシによれば、約70平方メートルの物件の売値が2千万円。
これを1000万円の手元資金があると仮定して
マンション投資の損得を計算してみよう。
ちなみにこのマンションの現在の市場相場は1200万円である。

 (20年間の収入合計)
①当時の家賃月12万円と今の家賃月8万円を加重平均して
家賃10万円で20年間貸したとすると
手取りの家賃収入の合計は2400万円になる
(これが表面利回りで6%になっている、ちょっといい話に思える?)
稼働率90%として実質収入は2160万円
②減価償却費を年仮に60万とする。
これは経費として認められるので節税効果は
税率20%と仮定して年12万円、20年で240万円の得

(20年間の支出合計)
①2000万円のうち半分1000万円を4%の20年ローンを使ったとして
 その返済利息が約450万円(銀行の儲け)
②月1万3千円の240箇月分の管理費合計が312万円
③固定資産税が年8万円として20年で160万円(市の儲け)
④不動産屋への仲介手数料が約70万円
(①〜④の合計が必要経費で992万円)

(20年間のキャッシュフロー)
●先ず所得課税を出す。
2160万円(20年間の賃料)−450万円(返済利息)−312万円(管理費)
−160万円(固定資産税)−240万円(減価償却費)−70万円(手数料)
=928万円(20年間の純利益)
928万円×20%=約182万円(20年分の所得税)

●次に正しいキャッシュフロー
928万円(純利益)−182万円(所得税)−1000万円(返済元金)
+240万円(減価償却費)=▲14万円(20年間のキャッシュフロー)

それではまとめてみよう。
①頭金1000万円と20年分の家賃収入1000万円でローンを返済し、
2000万円のマンションを自分のものにした。大成功!
②しかし、返済金は利益なので税金を取られた。現金を中心に考えると、
自分の財布からは20年間で14万円出ていったことになる。面白くない。
③更にこのマンションは800万円値下がりして、現在1200万円だ。
もし売って、現時点での総合的な結果を求めると
頭金1000万円と持ち出し14万円で、今の1200万円のマンションを
買ったということになり、結果的に僅か186万円の儲け。
しかし、頭金の1千万を銀行に預けていれば
186万円くらいの利息が得られた筈。
それも加味すれば、最終的にはトントン。

もしマンションが値下がりしなければ
20年間で800万円くらい儲かったことになる。
バブル景気崩壊によるマンションの値下がりが実に痛い。
戦後の高度成長期ならマンションも値上がりして
軽く1千万以上の純利益が生まれたのだが・・・

結局、大雑把な表面利回りが10%以上ないと
キャッシュフローとして財布に不労所得が残らない。
表面利回り6%では、スタート時からのうま味は享受できない。

しかし、出口が今でなく、死ぬときと考えると
返済の終わった家賃の8万円は、丸々年金に加算され
優雅な老後の助けになることだけは間違いない。
また、団体信用生命保険のお陰で、何時死んでも
子供に素晴らしい資産を残せる安心感も
出口戦略としては大きなプラス要素だ。

こうして、いろいろな角度から分析すると、
「いつ投資を始めるか、どう人生を楽しむか、何年生きるか、財産を残したいか」
これらが不動産投資を始めるか否かの
とても大きなポイントだということになる。

※管理費の百円単位の端数を切り捨てたり、
税率の個人差を無視したりしたので、数字に多少の誤差はある。
また、入居者が変わるたびに、多少の修繕費が出る筈だが、
これも礼金で賄えると考えて数字としては入れていない。
大まかではあるが、考え方としては投資には参考になる筈だ。

関連豆知識:団体信用生命保険
団体信用生命保険は、借入れ本人が高度な障害・死亡した場合は、
その保険金が支払われることにより、当該債務を弁済することができる。
よって、家族がその債務を引き継ぐことがない。

不幸にして被保険者が死亡したり、高度障害状態になった場合、
その時点の債務残高に相当する死亡保険金が貸し手である債権者に支払われ、
借入金がなくなる。

一般的には、健康状態を告知することで加入できるが、
健康状態によっては加入できないこともある。
告知する内容は
・ 最近3ヶ月以内の医師の治療・投薬の有無
・ 過去3年以内の手術、2週間以上にわたる医師の治療・投薬の有無
・ 手足の欠損・機能障害の有無
・ 背骨・視力・聴力・言語・そしゃく機能の障害の有無

返済の途中からは加入はできないが、途中からの脱退は可能。
但し、再加入はできない。
また、申込時70歳以上の人は加入できず、保険期間は80歳の

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