不動産の出口戦略(1)

2年に一つずつ不動産を買ったとする。
30年したら、15件の不動産所有者だ。
しかし、現実にはその間に、その幾つかを処分する。

死ぬまで持ち続ける物件も含め
買ったときには必ずその不動産の将来像を考える、
これは換金用、これは相続用、これは・・・と。
これを「不動産の出口戦略」といい、
買うときから考えておくことが望ましい。

その出口戦略を幾つか挙げてみよう。
①換金用
普通の人は、買うときから売るときのことを考えてはいない。
一生持ち続け、「いずれは子供に」と何となく思っている。
しかし、不動産を業としている人はそうではない。

時間貸し駐車場を経営し始めた最大の動機は
「儲かったら処分しやすい」だった。
土地の上に建物があると、売るのに苦労するが
時間貸し駐車場は、機械以外には何もないのだ。

土地購入で銀行借入れを増やし続けると、
必ずいつかは幽霊所得に悩まされることになる。
そのとき、買ったときより値上がりしている土地は
チャンスとばかりに売りに出し、借入金の返済に充当する。もちろん、5年以上経っていないと
利益の39%を税金として持っていかれる。
これを短期譲渡といい、出来れば避けたい。

5年、正確には買ってから5回正月を通過してから売ると、
利益に対する税金が20%となる、これを長期譲渡という。
出来れば、長期譲渡で売るようにしたいが、
それを待っているうちに景気が悪くなってしまうこともある。
世の中、そう上手くはいかないようになっている。

②相続用
死ぬまで持っているつもりで買うときには
借入れのときに、「団体信用生命保険」をつける。
この保険をつけると、買って翌年に死んでも
相続人は借入れの残金を払う必要がない。

おまけに、掛け金がないに等しいくらいに安い。
本当に便利な保険なのだ。
但し、一人1億円までなので、
どこで利用するかがポイントとなる。

もし、マンション投資などを考えている場合は
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)を使えばいい。
あわせ技で、2億まで利用できるから、結構便利だ。

③減価償却用
幽霊所得対策として、減価償却用に建物を建てる。
この場合はまさに建物だけあればいい。
だから、土地へあまり金をかけたくない。
そこで、定期借地権を利用するといい。

借地に木造建築物を建てると
22年の原価償却資産が生まれる。
50歳くらいで、この方法を利用すると
キャッシュフローの多い楽しい人生が送れる。
もし、40歳くらいなら、鉄骨がいい。
34年償却で、足腰が弱る頃まで利用できる。

減価償却用として、高圧線の下も面白い。
土地の仕入れが安い点で借地と似ている。
私は、一般住宅には向かないので倉庫を建てた。
今流行の「トランクルーム」だ。
10%以上の収益率で、一挙両得!

④娯楽用
別荘などの土地は本来値上がりなどは
はじめから期待していないし、できるものではない。
でも、出来れば、あまり値下がりはして欲しくない。

となれば、維持費のかかる戸建の別荘よりは
リゾート型のマンションの方がいい。
先日、軽井沢の一等地の中古リゾートマンションが売りに出た。
築十年の物件が、買った価格とほぼ同じ金額で売れたという。

やはり、土地と同様、リゾートマンションも一等地に勝るものはない。
ただ、リゾートの利用方法とかその流行が
年齢と共に変わることを忘れてはならない。
苗場や石打などのスキーリゾート地のマンションなどは、
スキーブームが去って、その価格たるや目も当てられない。
それを考えると、リゾートマンションこそ、
出口戦略をよく考えて買わなければならない。

⑤転売用
1年前までは、土地に倉庫などの企画を乗せ、
不動産プロジェクト融資を受け、
それをそっくり転売することが流行った。
私はこの現象を、「これは典型的なミニバブル状態だ」と考え
「そろそろ不動産価格もピークアウトするぞ」と思い始めた。

そして、今は本格的な不動産不況だ。
私の友人もこの転売ビジネスで大儲けしたが
今は、とんでもない状態に陥っている。

もう、日本では転売用に土地を買い
利益を得ようなどと考えてはいけないのだ。

ただ、親から相続した土地が利益を生まないなら
不動産ビジネスが成り立つ場所に土地を買い換えることを
考えるべきで、この分野でのアドバイスは随分とやってきた。

関連豆知識:定期借地権の種類
普通借地権は契約期間満了に伴う更新は
従来通り自動的であり、更新契約を必要としない。
また、地主の拒絶に正当な理由がない限り、
地主からの更新の拒絶は不可能。
よって、借主は当該物件を相続財産として引継ぎができる。
それに対する新しい形の借地形態が定期借地制度で、
土地利用の活性化を促すために設けられた。次の三つの方式がある。

①一般定期借地権
一般定期借地権はマイホームを借地権で取得したい人のためにある制度。
存続期間は50年以上であり、期間満了後借主は、
更地状態(建築物のない土地)で返却しなければならない。
また、地主に対し建物を買い取る旨の請求をすることができない。
契約は必ず書面。土地利用の用途は自由。

②建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権は期間が30年以上で、契約期間が経過した後に
借主から貸主に相当の対価により譲渡することを特約する借地権。
地主は30年以上経過したあと建物を買い取らなければならない。
この場合は、書面で契約する必要はないが、
将来の紛争防止の為に書面で契約した方がいい。

③事業用借地権
事業用借地権は、ファミリーレストランやガソリンスタンドなどの
ロードサイドビジネスで短期間の内に収益を上げ、
早々にその事業から撤退する場合などに利用価値のある借地権。
借地上に建てられる建物は事業用の建物に限定され、
存続期間は10年以上20年以下。
契約は必ず公正証書で作成しなければならない。

写真説明:沖縄のリゾートマンションも価格変動が少ない。
     築15年でも結構高く売れる。
     不動産価格的に人気の高いベストスリー
 

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