本ばかり読んでいる友人がいる。
確かに物知りだ。でも、何かが欠けている。
人としての魅力がない。
人の心が分かっていない。
だからなのか、人を見る力がない。
金額が大きい不動産を扱う上で
絶対になくてはならない力なのに・・・
不動産の世界には魑魅魍魎が跋扈している。
美味しい話が多いし、一度に騙せるお金も大きい。
そんな化け物と一度でも深い関係が出来たら
残念なことに、どこかの毛まで抜かれてしまう。
これは私の事務所の近くでの話。
「売りビル」の看板が出ている古びたビル。
年老いた老夫婦の持ち物で、ご主人は元大学教授。
それは彼が親から相続した大切な財産だった。
そのビルを、老後をハワイで過ごそうと
1.8億で売りに出したのだ。
もちろん、買い主を探してくれる専任媒介の業者は決めていた。
だから、本来はその業者を通して交渉を進めなければいけないルールがある。
しかし、物知りを自認するこの元教授は、自分でも動いてしまった。
「俺は何でも知っている」という自負があったのだろうか、
それとも仲介料をケチろうというスケベ根性が頭をもたげたのか。
看板を見て、持ち主を調べて近寄ってきた怖い人たちと
直接話をしてしまった。後はもう何も言うことはない。
見事に騙されて(脅されて)、何とその半値以下で売る羽目に。
話は全て合法的に進んだので、警察も介入できなかった。
本の世界と実社会の違いを分かっていなかった。
だから、何度でも言うが、
周りに信頼のできる人を沢山集め
現場感覚を磨くことが不動産業成功の鍵なのだ。
関連知識:取引形態
不動産の取引の流れは大きく分けて3つ。
① 売主⇒専任で依頼された不動産会社(もとづけ、元付会社)⇒
元付から依頼された不動産会社が買主を見つける(客づけ、客付会社)⇒
買主に不動産が移る(このケースが一番多い)
CF.売主が依頼する業者を一人に決めることを専任媒介という。
色々な業者に依頼するよりは早く買い手が見つかる仕組みになっている。
専任媒介の骨子はA:依頼者は、目的物件の売買、又は交換の媒介、又は
代理を、当該業者以外の宅地建物取引業者に重ねて依頼することができない。
B:依頼者は、自ら発見した相手方と売買、又は交換の契約を締結する
ことができない。
C:当該業者は、目的物件を建設大臣の指定する流通機構
に登録することになっている。
CF.売主が専任媒介契約を結ばないで、あちこちの不動産屋に依頼すること
を一般媒介という。この場合、頼まれた業者は
「一所懸命動いても、全然違う業者が客を見つけたらくたびれもうけの
骨折り損だ」と考え、どの業者も気合を入れない。
② 売主⇒専任で依頼された不動産会社が直接買主を見つける⇒買主に不動産が移る
※ この場合、依頼された不動産業者の手取りは①の倍になる。
③ 不動産を持っている不動産会社と買主との直接取引(業者の買取という)。
どんな仕事でも言えることだが、全ての人が生きるために必死に仕事をしている。
上記の元大学教授業者のように、業者の顔をつぶすようなことをすると
信用を失い、二度と相手にされなくなることがある。
「この人は」と決めたら、誠実に約束を守ることが大切。
この業界では、「俺は客だ」などという顔をすれば騙されるのが関の山だ。
写真説明:一泊百万円のスーパースィートのアルコープ
贅沢の極致も知っておいて損はない。
化け物はこんなところにも出入りする。
桑原、桑原!