心に生き続ける人に

癌と闘病中の人からよく聞く言葉が
「母のもとへ行きたい」

死んでいった父母や兄弟を思い出したとき、
私にもやはり母以上の存在の人はいない。
多くの人と同じように、
「死んだら母のもとへ行きたい」と願っている。
あの世で、母から「よく頑張ったね」と言われる
ことが目標で今を生きているような気もする。

母の包容力の大きさや先見の明など数え上げたら
きりがないほど偉大な人だった。死後50年経って
もほぼ毎日母の遺影に手を合わせている。

そして、私も、子や孫に、
「おじいちゃんのようになりたい」と言って
もらいたいし、そんな風に彼らの心の中にずっと
生き続けられたらと願っている。

近所での話だが、墓守と名乗る人が一族の骨も
土に撒いてしまい、ゆくゆくは墓じまいをして
しまうという噂を耳にした。

思い出の象徴である代々の人の骨も墓もなく
なってしまうなんて他のご一族にとっては
さぞかし寂しいことだろう。母が生前何度も
口にしていた「子々孫々」とは正反対の結末に
他人事とは言え、寂しさを感じる。

人の世とはこんなものなのだろう。形あるもの
はいずれ消えていくものなのだ。大切なことは、
「人の心に生き続ける人になる」ことなのだろう。
そのために己を磨いていきたい。

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