薬の分量・叱る分量

『風邪を引きやすい人』と『風邪を引きにくい
人』がいるように、細菌にも抗菌薬に対して
個体差があります。

ですから、医者の一番の仕事は、患者に処方
した薬の効き具合を一人一人きちんと確かめ
ながら、病気を治療していくことなんです。

医者から5日間飲めと言われた抗生物質を勝手
に3日でやめたりすることはとても危険なこと
です。もし投与した抗菌薬に対する細菌の
耐性がぶり返すと死ななくてもいい病気で
死んでしまうこともあるからです。

最近、このことと子育てがとても似通って
いることに気づきました。子供にも、
「叱られないとダメな子」と「叱られる
とダメな子」がいるんです。
つまり、個体差です。

教育の現場で50年。個人差に応じて叱る分量を
決める塩梅の匙加減を知ることの難しさを
痛感しています。このことが分からない親は、
我も我もと子供を有名校に入れようと子供の
お尻を際限もなく叩きます。

しかし、残念ながら才能のない子のお尻を
叩きすぎて、子供を非行に走らせた親が何と
多いことでしょうか。そんな悲劇は毎年、
ニュースになっています。

最近は、抗生物質の大量投与で、薬の効かない
人が増え、薬剤耐性(AMR)として社会問題化
しています。同じように、子供の扱いになれて
いない若いお父さん・お母さんが、子供を叱り
すぎて事件になっている家庭が大発生して
います。

薬の処方の場合と同じように、子育てでも、
「個体差」を知ることが大切なのですが、
それを知る機会が、今は少なすぎるように
思います。出来たら、私も叱る匙加減に
ついて機会があるごとに講演して歩こう
と考えています。

※勉強嫌いだった高校生の頃、母に言われ
児童相談所へ知能指数を調べに行きました。
その時のIQが148でした。勉強すればどこの
大学でも入れることが分かったのですが、
私の勉強嫌いを知っていた母が私に言った
言葉は、「適当な大学に行って、実業家を
目指せ」でした。母は、私の性格を熟知して
いて、上手に育ててくれたような気がします。
お陰で、桁違いに楽しい人生を送ることが
できました。

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