親族の介護をすることなく人生を終えられたら
それにこしたことはない。だから、そんな人は
運がいいと思っていた。
しかし、最近は、親族の介護を経験することが
決して不運なことではないと、つくづく思う
ようになっている。
完全に寝たきりの介護は別として、最低限
トイレに行かれるくらいまでは自宅介護をする
ことは、己の人生観にとても必要なことでは
ないかとさえ思っている。
勿論、介護保険制度が充実してきている
今だから言えることで、30年前には
こんなことは言えなかっただろうけど・・・
特に、若い人には介護経験は絶対に必要だ。
人生とはこういうものだということを
身をもって知るのには欠かせない経験
だからである。
民法877条1項には、「直系血族及び兄弟姉妹は、
互いに扶養をする義務がある」とある。
「扶養する義務がある」という条文内容
だけでは、その具体的な程度や内容が分からない。
「自分の親及び兄弟姉妹に対する扶養義務」は、
「扶養義務のある者が、自分の社会的地位、
収入等に相応した生活をしたうえで、
余力のある範囲で生活に困窮する親族を
扶養する義務」と解されている。
自分の生活だけで精いっぱい、余力がない、
という場合には、「自分の親及び兄弟姉妹に
対する扶養義務」は認めらないのだ。
これを知らないから、介護にまつわる事件が
多発してしまうのだ。
自分の親や兄弟姉妹に対する扶養義務は、
「自分の生活を犠牲にしてでもすべての面倒を
見る義務」ではない。この大原則を介護される
側が知らないととんでもないことになる。
介護の余裕がない子供に、介護してくれないと
愚痴をこぼすなんてとんでもない弱者なのだ。
介護経験をしておけば、こんなバカな老人には
ならないだろう。
そんな意味でも、介護経験を積んだ人たちが
多ければ多いほど、世の中は住みやすく明るく
なるというものなのだ。