想定枠の拡大

人は誰もが生涯を通して
平和で豊かに生きていきたいと願う。
しかし、現実にはこの願いを打ち砕く
災害、異変、事故が次々と襲ってくる。

祖父の90年はまさにその典型であった。
関東大震災、世界大恐慌、敗戦。
其のたびに、祖父はすべてを失った。

祖父に育てられた幼少期、
何度その話を聞かされたことか。
だから己が生きてきた75年間は、
「そうならないよう」注意深く生きてきた。

地震、台風、洪水にも十分に備えている。
今建てているビルは耐震指数が2である。
これだけで建築費が3千万円もはね上がった。
そして、更にそれ以上の備えを用意している。

もし、今日第二の世界大恐慌が起きたら・・・
そのために、会社も個人も借金をゼロにした。
当然、ビジネスの成長スピードは落ちる。
しかし、年齢を考えたら、成長より安定だ。

次に事故だが、一番身近で怖いのが交通事故。
だから、車のスピードはかなり抑えている。
自分を抜いていく車を見ると、こう考える。
「俺は急ぐ必要がなくて幸せだ」

運転中にスマホをしている人は許せない。
事故れば全てを失うし、相手も不幸に巻き込む。
私は、運転中は全神経を運転に集中している。
これは運転する者の基本中の基本マナーだ。

このように生きてきたことで
75年間の生涯は十分に安定していた。
そして今、最後の恐怖「死」に備えている。

死は、事故であり、異変であり、災害である。
だから、想定枠を拡大し備えなければならない。
この10年、遭遇した死を詳細に分析してきた。

最高に幸せなポックリもある、
発病後1年以内のまあまあの死もある、
ベッド上での闘病10数年という不運もある、
痛みを伴う地獄のような死も知っている。
子供すら見分けられない認知症での死もある。
災害や事故での死も考えておかねばならない。
自殺を除き、死に方を選ぶことができない。

死んで子供たちに迷惑をかけないように
事業や私生活の「見える化」も進めている。
ネット口座などは極力作らないようにしている。

この想定力で、最後の最後まで安穏を続けたい。
永続的な幸せとはこの想定力にかかっている。
すべてを「想定内だ」とほほ笑んで終わりたい。

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