品格

多くの人の一生を見てきた。
人の一生を観察するのだから、少なくとも60年以上はかかる。
例えば、私が16歳から観察し始めた20歳の人なら、今は70歳。
学業を終えて、定年して、生きていれば古希を迎えている頃だ。

斯くの如く一生は長いから、40代で成功しても晩年が悲惨な人なんてザラ。
だから、そんな途中経過で人を賞賛しても意味がないと常々感じている。
様々な人生を見つめて60年、本当に人生観察って面白い。

5歳の時から知っている彼は高校を卒業して、家業の農業を継いだ。
その傍ら、農協の職員になり、高給を貰い、ゴルフに明け暮れた。
ハンデはシングルで、その二流ゴルフ場ではかなりの顔だった。

週末にゴルフ場で見せる彼の顔は得意満面で、肩で風を切っていた。
「我こそは当ゴルフ場のクラブチャンピオンなり」と言う風情なのだ。
「ゴルフの下手な奴は相手にしたくない」という暴言も吐いていた。
謙虚さも無く、品もないただの田舎のおやじだったのだが・・・

そして、定年の頃、どこの農協も台所が苦しくなった。
だから退職金は大したこともなく、運悪く重度の腰痛も患った。
近くのホームセンターで、63歳の頃の彼に会って驚いた。
チャンピオン当時の面影はなく、逃げるように店から出て行った。

自慢の白髪も薄くなり、70を遥かに超えた感じだった。
絶頂の頃の彼からは想像もつかない変貌振りに唖然とした。
そして、間もなく68歳で他界したという噂を耳にした。

たった一つの人生を見て、全てを語るつもりはない。
ただ、人生って分からないものだとつくづく思うのだ。
やっぱり、図に乗った分のしっぺ返しは必ずありそうだ。

彼は学歴のなさをゴルフの腕でカバーしようと努力した。
負けず嫌いな分、桁違いに練習に打ち込み、骨を酷使した。
そうして、晩年の病気がちな体の基礎を作った。

人は有頂天のときに、地獄行きの支度をしていることが多い。
彼の場合は、学歴コンプレックスがゴルフへの情熱の源になり、
そして、またそれが晩年の不健康の原因にもなった。
あれほどの負けず嫌いでなく、もっとゆったりと生きればと・・・
そうすれば、多くの人から尊敬されただろうに。
他人事ながらそう感じてはいたのだが(余計なお節介だろうけど)

結局、彼の一生はイーブンパーだったということか。
彼のように、コンプレックスをバネにして頑張る人の話はよく聞く。
ただ、そのバネが上手く働いても、それを鼻にかけて品が無いのは醜い。
コンプレックスの塊の私も気をつけねば・・・

そんな目で周りを見回すと、高い品格を感じる人は意外と少ない。
白洲次郎のような品格を身につけた人が理想だという友人が多い。
全く同感だ、まだ間に合うか?
 

洋風居酒屋「リゴレット」:教え子に招待された超繁盛店。ウェイターやウェイトレスのサービスに驚嘆する。チキンで汚れた指を見た瞬間、「はい、どうぞ」と新しいおしぼりが。トイレに行こうと腰を浮かせたら、「はい、こちらです、足元にお気をつけて」と飛んでくる。栃木のもち豚を使ったグリルド・ポークや比内地鶏のスパイシーチキンも驚くほど旨い。仕上げに注文したツナ・プラムも新食感。時代の変化を感じる夜になった。まだ、若い世代との交流は欠かせない。

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