不幸な女たち

いつもの小料理屋『家族亭』
カウンターでの今日のテーマは、
「幸せなんて考え方次第」

奥で日本酒を飲んでいる五十路の女。
やけにマスターに絡んでいる。
「私って、なんでこうも不幸なの」
この言葉の連発に、周りはドンビキ。

でも、マスターは料理の手を休めず
丁寧に受け答えをしている。
低い声で、マスターがその女に聞いた。
「酒がグラスに半分入っていたら
酒がまだ半分も入っていると思うか。それとも、
酒がもう半分しか入っていないと思うか」

彼女が後の方だよと答えると、
「あんたはいつも100点が基準で、
足りないものを探すから不幸なんだよ。
もし、ゼロが基準で、少しでもあるものに
感謝する習慣があれば、幸せになれるのに」

昔から、マスターが博学なのは知っていた。
だから、いつも気のきいたことを言うのだが、
今日の言葉には居合わせた客が全員、頷く。

最近そのことを象徴するような相談事が。
50になる教え子の親の話しなのだが、
その親が教え子兄弟、つまり子供たちから、
ひどく嫌われて困っているというのだ。
「実の子供ならもっと親の面倒を見ろ」
というのがその親の口癖だという。

だから、折角身体の不自由な親の家を訪ねても、
行った途端にそんな言葉を浴びせられるので、
子供もだんだん寄り付かなくなったのだ。

満点の子供ならこうすべきだという、
かなり身勝手で傲慢な親だから、
子供さえも寄り付かなくなってしまった。
自業自得とはいえ、可哀想な親だ。

私も、これからは、マスターの言う通り
0基準で考える練習をして、
今まで以上に人に感謝の気持ちを持とう。

When we were eating dinner at a restaurant,
a lady who always complains about her life
began to pick quarrel with the owner- chef.
Then all of us clapped our hands
for his perfect replies,
because all of them are to the point.

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