悪魔の囁き

最近は駅近物件しか買わないことにしている。
たまに郊外で300坪以上の物件を買うこともあるが、
その場合は大交差点の角地に限定している。
そんな厳しい条件を付けているので失敗は少ない。

そんな折、教え子からの購入可否についての相談が。
不動産屋さんが物件資料に添えた推奨文が余りに名文で、
玄人の私ですら一瞬「すぐに買わないと」と惑わされた。

その名文はかなり長いので要点を書き出してみる。
① 土地180坪、建物210坪、築27年、2DK16世帯
② 駐車場1車室月額5千円が16台分敷地内
③ 部屋は2DKで一部屋月額5万円
④ ターミナル駅から5キロでバス停至近(2分)
⑤ バスは朝晩が2分間隔、昼は五分間隔
⑥ 建物比7割で25年間、年間減価償却は定額280万
⑦ 隣地にセブンイレブン、小学校は5分圏内
⑧ 横浜銀行が1.5%前後で1億のフルローン可能(属性次第)
⑨ フルローンでも月にキャッシュフロー30万近く可能
⑩ 現在空室は2部屋あるが年内に満室可能
よって満室時年間表面利回りは約10%。

フルローンで月のキャッシュフローが30万なら、
私でもすぐに飛びつきたいと急いで現地へ向かった。
もちろん買うのは私ではないのだが・・・
その結果の私なりの分析をまとめてみた。

① 普通は満室でも計算上は9掛けにするのが常識なので、
家賃収入は83万円×0.9で747000円
② 修繕積立金は1坪500円必要なので一室13坪で約7千円
よって月間積立費用は16室分で約11万円
(外壁塗装、鉄部塗装、屋上防水、ボイラー交換な大型工事)
③ 共用部電気代その他の雑費用が最低でも月額4万
④ 土地と建物の固定資産税が月割りで7万円
⑤ 定期的排水管清掃、消防定期点検など月額3万円
(電球交換、風呂清掃、郵便受け鍵修理、壁紙張替も含む)
以上から、余剰金は月額50万円に減りキャッシュフローは、
完全にゼロとなり、実質利回りは6%前後になる。

勿論、現地では建物を詳細に観察したのだが、
購入時に1500万円くらいの修繕費が必要に思われたので、
節税効果だけを狙ったとしても購入価格は8500万が上限。

本音を言えば、
こんな建物は価格的には資産価値ゼロで、
買うなら土地値だけで最高でも8000万が妥当.
買付け証明書に書く数字は遠慮しても8000万だ。
これなら表面利回りは13%近く実質利回りも7.5%  
少しは報われる可能性も出てくる。                            
  

街の不動産屋って本当に怖い、正に悪魔の囁きだ。
賃貸ビルの運営を知らないと名文の裏を読めなくて、
人生、儲かりもしない上に管理気苦労の連続になってしまう。

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