名文句

あちこちの管理組合で役員をやっている。
その動機は明白で
「私の知識や経験がマンションの役に立つのなら・・・」

とあるマンションの大規模修繕では、
その多くの工事が私の経験に基づいて施工された。
屋上防水工事、水切り工事、コーナー飾り物、樋の交換、・・・・
こんな工事の発想を素人の一般組合員に出来る訳がない。
発想がないから何も文句がなく、全てがスムーズに運んだ。

ご存知の通り、これらの仕事は無報酬である。
でも、こうしてスムーズに運んだときは無報酬でもイライラしない。
ところが、このことを忘れて注文をつける組合員もいる。
そうすると、私は切れてしまう。

「この工事は他社の見積もりも取った方がいいのでは」
別の30万円の仕事で、忙しい私に他社の見積もりを取れと言う。
「何で私が取らなきゃいけないんだ、貴方がやればいいじゃないか」
そう言われたこの男は、びっくりしてキョトンとしている。
「私は貴方から給料を貰っているわけではないんだから」
ムカついた私が追い討ちをかける。

だいたい見積りを依頼するのに
どのくらいの時間とエネルギーが要ると思っているのか。
同じ条件で比べるために仕様書を作らなければならないし、
そのための説明にも時間がかかる。

この間の大規模修繕工事では、
同条件の見積書を取るために工事仕様書が必要で、
これを作るために設計管理会社に200万円も払ったのだ。
「見積書を取れ」なんて軽々しく言うもんじゃない。

大規模修繕のあの水切り工事の注文までに、
一体何年の歳月がかかったと思っているのか。
5年間の実証実験を繰り返して、やっとたどり着いたというのに。
それでも私は組合に一銭も要求なんてしていない。

兎にも角にも、馬鹿の一つ覚えのように、
たかだか30万円の工事で
「他社の見積もりも取ったらどうですか」なんて
忙しい私に二度と言わないで欲しい。

今朝、こんな場面で相手より先に使う名文句が閃いた。
「皆さん、次回の理事会までにこれよりいい見積もりを取ってきてください」
わおー、なんて素晴らしいやり方だ。

こうすれば、複数の見積もりを取らない責任を他の理事に転嫁できるし、
私が無駄な時間を割かれることもなくなる。
加えて、見積もりを取ることの大変さも皆様に学んで頂ける。
既に私は大変な時間をかけて一社から見積もりを取っている
この私の大変さも分かろうというものだ。

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