交渉は決定権者と

最近、一つの土地買収交渉が成就せずに終わった。
私の損害は汗一粒だったが、私についた担当者Mの会社での顔は丸つぶれだった。
失敗原因は売主の会社の担当者が経理部長で、Mが彼とだけ交渉を進めたこと。
そう、決定権のない単なる部長だけを相手に話を進めていたのがいけなかった。
事務的なことはともかく、交渉過程で相手の長に会わなかったのは大きなミスだ。
だから決定権者と話を進めた見えない競争相手に獲物をさらわれてしまった。
彼はMに綺麗な返事だけをして、私側の人たちを喜ばせた。
もちろん、私にも「この企画は行けます」として伝わってきた。
経験豊富な私は「ひょっとしたら・・・」と百パーセントは信じていなかった。
単なる勘でなく、うまくいく仕事とちょっと違う違和感があったのだ。
そして、案の定、私の勘が当たってしまった。
今朝、桁違いに大きいがこれと似たようなニュースが飛び込んできた。
あの超大型ファンドの〜HDがおかしくなっているという。
奇しくも、そのおかしくなった直接の引き金が私の小さな話と酷似している。
その〜HDの担当者Sが土地所有法人の決定権者でない単なる経理部長を、
数百億の買収の交渉相手とし、2年間も手続きを進めていった。
土地の所有権も移り、工事を開始してみたら、裁判所より「工事中止」と。
土地所有法人の金庫に売買代金のほとんどが入っていなかったというのだ。
登記が済めば金は渡っていると誰もが考えるが、相手が宗教法人だと・・・
宗教法人などの特殊法人では、権利書や印鑑を経理部長が持っていることが多い。
買う側の〜HDも売る側の法人も幼稚にもSとその部長に全てを任せた。
この二人が悪だったら、社長や理事長などに知らぬ間に所有権は移転する。
特に今回の組織の理事長は権力を持っていても不動産の知識がない。
そう、元は僧侶だから。
社運を賭けるような交渉には次のことを忘れないように。
最初はどうであれ、途中からは出来るだけ決定権者と会うこと。
そして、それが叶わないのなら、「交渉などしない」と言える勇気を持つことだ。

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