老人ホーム選び

「高木さん、高木さん」
その声の方を振り返ると、同じマンションの3階に住むご老人。
上大岡のデパ地下、いろいろな人に会うが呼び止められたのは初めて。
「お散歩ですか」
「いえ、お昼のお弁当を買いにホームから下りてきました」
「えっ、ホームって?」
「半年前に近くの老人ホームに入ったんです」
「じゃー、マンションは売ったんですか」
「娘たちが使っているんですよ」
以前、車でマンションから社会保険事務所までお送りしたことがあった。
何故か気の合うご老人で、会えば必ず数分間立ち話をする仲なのだ。
このところ会わないと思ったら、そうだったのか。
訊けば、昼間は必ず街に出て過ごしているという。
老人ホームの人たちとの会話があまり好きではないと話す。
3食全てを自分で用意し、食堂には行かないのだと。
なるほど、自分が想像していたのと違う老人ホームでの生活だ。
確かに、ホームに入所しても、死ぬまで皆と仲良くやれる保証はない。
否、入所している人たちとうまくいかなくなる確率の方が高い。
考えてもみなかったことだ。
彼は始めから入所者との縁を持たないと心に決めていたらしい。
そうなると、やはり老人ホームは街中がいい。
朝の食事を終え、本を一冊片手に街のカフェに行くなんて格好いい。
そう言えば、ヨーロッパの街角のカフェによくある風景だ。
年をとったら田舎に引っ込むのは嫌だと思っていたが、
このご老人の話を聞いていて、益々その思いを強くした。
この老人がマンションに越してきた年齢が今の私の年齢だから、
もうすぐ私の問題なのだ、老人ホーム選びも含めて・・・

こんな大きな老人ホーム、万が一村八分にあったら悲しい末路だ。

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