お金の使い方

彼は本当にいい奴だった。
人を見抜く力もあったし何よりも温厚だった。
だから、多くの社員が彼を慕った。
私のいない所で私のことを悪く言ったという話も無かった。
逆に「アノ人ほど社長にうってつけの人はいない」などと言っていたらしい。
だから、私も信頼していた、お金の使い方を除いては。
世の中には、財布の中身を省みず大盤振る舞いをしてしまう人がいる。
そのタイプには二通り、見栄をはる人と気前のいい人。
彼は決して見栄を張るような人ではなく、気前のよさが災いしたタイプ。
ただ、会社のお金をつかって気前がいいのはよくないことだと思ってはいた。
彼にもう少しお金の管理ができたら、さぞかし大物になっただろうと惜しまれる。
生まれつきの地主や大成功者は気前がよくてもすぐには潰れない。
しかし、並の人間は倹約家でなければ成功者にはとてもなれない。
「金持ちほどケチ」とは言い得て妙だが、
そんなケチでも密かな贅沢の楽しみは一つや二つくらい持っている。
その贅沢は大きく分けて五つ、グルメ、夜遊び、旅、車、家。
ただ、贅沢である以上、一つの贅沢に月20万円はかかる。
例えば、車。
月20万×48ヶ月が健全に乗れる新車の価格になる、つまり1千万円。
1千万円の新車に乗る人は毎月20万円が車に消えていく、恐ろしい。
しかし、上手に使えばそれはそれで20万円の元が取れることもある。
敢えて高い車に乗って、大きい仕事を取ってお金を増やしている人もいる。
否、そのために高級車に乗っていると思える実業家も多い。
グルメはどうだろうか。
私が時々通う和食レストランに月に20日は来る男がいる。
彼が一回につかう額は3千円、だから月だと6万円。
30そこそこで誰かに奢るわけでもないのでこの額で済むが、
還暦も過ぎると同席者に奢ったりすることもあるので10万はかかる。
だから、誰かを連れて行ったり高級店に行けば軽く20万にはなるだろう。
ただ、こんなレストランで会う人とは新たな商売が生まれることもある。
グルメで商売繁盛とは一石二鳥で楽しい生き方だ。
俗にいう夜遊びとは女性のいる店にいくこと。
私は酒が飲めないのでこの手の店には通いつめない。
だから詳しいことは知らないが、こんな所で10年も遊び続ける人は
真の金持ちか、しっかりした会社の社長さんくらいなものだろう。
前横浜市長の中田氏はこの月20万円の夜遊びがもとで市長の座を降りた。
ことほど左様に、大概が半年くらいで行き詰り、音沙汰がなくなる。
旅はどうか。
月20万ではファーストクラスの旅は不可能だろう。
月20万円で年間240万円、隔月で6回の旅だと一回に40万円。
この額ではビジネスクラスがいいところか、もちろん二人旅の話だ。
今まで、旅で知り合った人とビジネスが成立した経験はない。
最後が家。
贅沢なら当然別荘の一つや船の一隻は持ちたい。
一つの別荘やクルーザーを維持するのに月5万はかかる。
年に何回かそこで過ごせばあっという間に年に200万円はかかる。
別荘や船が仕事の武器になるという話は何度も聞いたことがある。
さて、こうした数字をきちんと知っていれば、遊び方にも磨きがかかる。
くだんのレストランで会う彼には「生きた金の使い方」を教えている。
最近はこんな若者たちと食事をしながらビジネスの話をするのが実に楽しい。
それにつけても、モラトリアム法なんて当てにするようでは成功者にはなれない。
大手銀行の支店長が言う、「一度申し出た人には二度と融資はしません」
要するに、お金の使い方を知らない人という烙印が押されてしまう。

散歩コースの野比海岸

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