老い支度(25)

どう生きる?
マンションの別名は「集合住宅」、何とも味気ない。
文字通り、一箇所にかたまって住んでいる。
ところが、ここは色々な老後の観察をするにはもってこい場所。
私のいる集合住宅管理組合の理事会で
不思議と気の合う鳥居さんの老後は実に楽しそう。
親は6121号室、お嬢さんが6521号室
スープの冷めない距離に親子が住んでいる幸せなおじいちゃん。
古希を過ぎているというのに車は真っ赤なワーゲン。
「鳥居さん、今日はどちらへ」
「娘とゴルフです」
「お気をつけて」
絵に描いたような理想的な老後の朝の風景。
老後観察をしていて、老後には二つの型があることに気がついた。
目標を決め、切磋琢磨して生きる人とただ楽しく毎日を過ごす人。
例えば、前者には定年後に陶芸を始め、プロ級の腕前になっている人がいる。
その作品が高値で売れる力のあるこの人は目標型人間である。
そして、後者は美味しいものを食べ、旅行に明け暮れたりする人たち。
名前は付けにくいが享楽型人間とでもいうのか、どこにでもいるタイプだ。
散歩だ、スポーツクラブだ、温泉だと健康のために精を出す人も
享楽的とは言えないが、分類上は後者に入れよう。
女性の多くが後者に属するのはお産のせいだといった人がいる。
男も多くは後者で、目標型の人は稀にしかいない。
定年後に釣りやゴルフに夢中になるタイプは享楽型に入ると思うが、
この遊びでプロ級の腕前になり、結構稼いでいる人もいる。
だから、厳密に分類することに大した意味はない。
もちろん、どれがいい老後だなんて決める必要もない。
あくまでも好みの問題だから。
ただ、一つ注意しなければいけないのは
自分と違う型の人の老後を尊重する大らかさが必要だということ。
歳をとると頑固になる場合が多く、自分と違う生き方を
「面白くない」などと言ったりする人が多いので面食らう。
くだんの鳥居さんは美味しいものを食べ歩き、
時間があると建築コンサルティングの仕事をしている。
特に頑固ということはなく、笑顔の美しいおじいちゃんだ。
マンションの管理組合でも、長期修繕委員として積極的に協力してくれる。
彼は享楽型と目標型の両方の要素を併せ持っている。
私の目標はそんな彼の生き方。
また、彼のような笑顔の人になれたら、それこそ望外の喜びだ。

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