「先生、また来週会おうね」
5歳の生徒たちが振り返りながら手を振り、同じ言葉を繰り返す。
英会話クラブでの外人講師の代行、今日でもう6回目。
数人の親からは、「代わりじゃダメだ」のクレームが来ているらしい。
しかし、当の生徒たちは私の授業が大好き。
「当たり前だ、教えた生徒の数が万を越す大ベテランだもの・・・」
原発事故後、外人講師が日本から脱出して2ヶ月。
何通も来るロンドンからのメールのタイトルは、Arrival in Japan
ウブでバカな日本人だから信じてしまう、「絶対に来週は帰ってくる」
もう、生徒の親たちに言い訳を言う元気も失う。
5歳から12歳までのクラスの代行が終えると次は高校生。
これは受験だから、以前から私が直接教えているクラス。
教えるのは大好きだけど、代行の後の授業は疲れる。
「もう、そろそろやめたいな」なんて弱音が頭をもたげる。
でも、生徒たちから貰う元気は捨てがたい。
言葉一つとっても、年寄りとは違う言語から若さが伝わってくる・・・・
「先生、キーボードクラッシャーはどれが好き?」
10歳位の子供たちの間で大ブームのYou Tube。
買ったばかりのスマホを取り出し、好きなのを見せる。
「俺もこれが好きなんだ」と生徒が目を輝かす。
こんな会話はマンション仲間とは逆立ちしても不可能。
少なくともビジネスで成功しようと考えているなら、
理解できる世代の幅は広ければ広い方がいいに決まっている。
年寄りとだけしか会わない毎日なら仕事の成功率はかなり低い。
現在の生徒の最高齢は32歳、この生徒たちの存在は私には貴重だ。
そして、当の私はもうすぐ古希。
「いつまで生きればいいの?」
「歳を重ねると幸せは増えるの?」