「良かった」と言える人生

75になる友人はとても風呂好きだ。
港南台のスーパー銭湯「おふろの王様」へ週に何度か足を運んでいる。
このタイプのお風呂の発祥地は20年位前の名古屋だったような気がする。<当時は「24時間銭湯」とかいって話題になった。 今では日本全国津々浦々どこにでもある。 連れ合いのいる狭い家に一日中いては相手に迷惑だからと, 日がな一日銭湯で時間をつぶす生活を想像してみる。 そう、窮屈を捨てたら退屈が待っているという風景が眼に浮かぶ。 これと同じように20〜30年前から徐々に全国に広がったのがスポーツクラブ。 別名フィットネスクラブと呼ばれているが、 当初は、暇な奥様族にとっては優雅な生活のシンボル的存在だった。 勿論その目的が「健康維持」であることは言うまでもない。 現在、昼間のこれらの施設に共通するキーワードは、 「デイケアセンターだ」と言った人がいる。 昔、最先端で今はそうでないものは多々あるが、 これほどイメージが変わってしまったものも珍しい。 一度、昼間のスポーツクラブを覗くとその意味がよく分かる。 そこで汗として失われていくエネルギーは、 車の吐き出す排気ガス以上の無駄だなんて思ってもいないが・・・ そこでは人が群れるので、自然と派閥が出来、 親分とかリーダーが生まれ、村八分や喧嘩が絶えない。 もちろん、ご他聞にもれず老いらくの恋も生まれる。 忘年会だ、送別会だ、暑気払いだと口実を作っては居酒屋に群れる。 かっこいい男をめぐってのトラブルも絶えない。 もちろん、健康のために通う多くの会員には無縁のことなのだが、 それでも、横目で見て、話題として楽しんでいる人も多い。 そんなスポーツクラブに週に4日も5日も通っている人たちは、 死ぬときには何を考えるのだろうか。 一度でいいから、「どうでした、あなたの人生は?」と聞いてみたい。 「余計なお世話だ」と怒鳴られるかな・・・ 死ぬときに、「素晴らしい人生でした」と言える人でありたい。

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