批判と要求の老後は嫌だ

学生時代、愛読書の一つが「ラッセルは語る」だった。
悪戦苦闘して、「What’s philosophy ? 」を原書で読んだ。
1950年にノーベル文学賞を受賞した彼はアリストテレス以来最大の論理学者だった。
その彼が、著書の中で、幸福について詳しく述べている。
幸福の四要素として、彼は次の四つを挙げた。
「健康、丈にあった財産、家族(人間関係)、仕事(やりがい)」
中でも、人が生きるのには「やりがい」が不可欠で
立派な老人ホーム以上に充実したソフトの提供が
政治や行政のやるべきことだということを知った。
老いても出来るやりがいのある仕事の創出に知恵を絞り、
年金受給資格年齢を引き上げないと年金制度は必ず崩壊する。
そして、個人レベルでも「生涯現役」を目指すことが、
老いの幸せの原点だということを多くの人が知るべきだ。
「年金生活」なんて定年後の2年間の休暇で十分だ。
我々が学生の頃、一学年は230万人くらいだった。
それが今、一学年は約その半分になった。
なのに、多くの学生が就職氷河期に苦しんでいる。
人口減少で国が危ういと言いながら、
今のたった百万少々の学生にすら十分な仕事が与えられない。
逆に言えば、人口が減少していなかったら、
一体どれだけの学生が就職浪人に追いやられたか。
人口が減少してちょうど良かったではないか。
その人口が減ることで年金制度が維持されないのなら、
老いた人たちに少しでも長く働いてもらうか、
成人して子供を持たない人たちの年金負担額を増額するしかない。
兎にも角にも、定年後に遊びほうける人生なんて現代人の驕りだ。
だいたい総人口の20%以上が65歳以上の老齢国家・日本で、
その2500万人に毎月10万円の医療費と年金負担が発生すると、その総額は何と30兆円、真水の国家予算に匹敵する額なのだ。
このままの年金制度が続くなどと考える方が滑稽だ。
諸外国と比べても日本の税率はかなり高く、もう限界に近づいている。
だから、古希を過ぎても仕事に従事し、
早くから老い支度をすることが、痴呆を遅らせ、
健康と丈にあった財産を手にし、幸せな第二の人生を確かなものにする。
90を過ぎても働いている人たちがいる。
日野原先生のような豊かなお医者様から、
新橋3丁目の理容師・加藤寿賀さんのようなガード下に住む貧しい人まで。
死ぬまで働くと決めた人たちの老いの人生には、
何の暗さも悲壮感も感じられない。
それどころか、充実した人生には幸せが満ちているようだ。
私もそんなまねをして、少しでも長く世の中のため働きたい。
新橋のクロニクル、一人暮らしの加藤寿賀さん、
毎日、町の誰かがその様子を見に彼女の店を訪ねる。
家族ではなく、町が働く老人を支え、応援している。
この加藤さんが住む新橋のぬくもりを伝える番組が、
昨年の11月5日、深夜放送で流れた。
都会では田舎より一ヶ月早くお盆を迎える。
その7月、店の前で“迎え火”に手を合わせる加藤さん。
先立った夫と娘を出迎えるラストシーンに胸が熱くなる。
箱物の老人施設の充実も重要な政治の課題だが、
家族とか町のぬくもりをもう一度見直したい。
私のPマンションでも微力ながらその努力をしている。
AEDの設置や80歳以上の方の「声かけ名簿」作りも、
そんな温かい想いの一環で始めたものだ。
災害時には誰がどの部屋を確認するかが決まっている。
ただ政府や行政に要求するだけの無能な人にはなりたくない。
居酒屋で総理を馬鹿呼ばわりする割には自分の案すら持っていない、
そんなアホらしい人にはなりたくない。
出来るなら、身近にできることを自らやっていくことが大切だ。
自分の老い支度ができた人は、
出来ればその余力で困っている人の働き場所作りにも貢献して欲しい。
そういった意気込みが老いを第二の青春にしてくれる。
早くから「生きがい」を創出すること。
年寄りから「生きがい」を奪わないこと。
政治が「生きがい」を考えてあげること。
これが老い支度には欠かせない視点だ。

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