今月は、三つのマンションの管理組合総会に出席した。
その中の一つはそのマンションの運命を決める設立総会。
収容人員五百人の会場の最前列に座り、理事さんたちの顔を見る。
今日の総会の空気を読み、適切な質問をするために。
穏やかな顔の紳士然とした理事長さんが、
出席者数を読み上げ、総会が適法に開催されたことを告げる。
すぐに私が挙手。
「ここに座っている方たちの出席資格を確認しましたか」
「どのような意味ですか」
「出席している人がマンションの共有者本人かどうかです」
「そうだと思います」
「共有者でない妻とかお父さんでないことを確かめるべきです」
突然の難問に窮した理事長さんが管理会社のフロントマンに助けを求める。
「今後、その点を確かめるようにしますので今日は何とか・・・」
「それならそれでいいです。今後きちんと確かめてください」
こうして総会は無事にスタート。
スイスイと3号議案まで通過したところでまた挙手。
「このマンション管理組合が自治会組織に入ることがないように」
「いえ、入るようにするつもりです」
「マンション役員の外に自治会の役まで回ってくるのは困ります」
突然大拍手が沸き、「そうだ、そうだ」の声が沸き起こる。
困った理事長さんが、
「現在はまだ白紙ですから」と急に態度を変える。
マンションでは、設立総会ほど重要なイベントはない。
マンション百年の計は初年度にあるからだ。
その意味で、私は設立総会には万難を排して必ず出席する。
Pマンションの11期総会も先週終わった。
この総会の空気は「何もやらない、何も決めない」
だから、その空気に沿って、最後列で観劇としゃれこむ。
現役で忙しい身の理事長さんは、かなり有能な人。
だから、1年間面倒なことはやらないことを念頭に活動された。
11期目の理事会なんぞはその方がいいことも多いのは事実だ。
そんな状況下での総会だから、議案はどんどん通過する。
その諮り方が実に巧妙で勉強になる。
決を採るときには、急に声を小さくして、
「では、3号議案に反対の方は挙手をお願いします」
どんな質問でも適当にはぐらかしてしまう技は桁違い。
思惑通りどんどん会議は進行し、あっという間に終了。
記憶では、終了時間の新記録が出たのではないか。
三つ目の総会についてはまた別の機会に報告しよう。
兎にも角にも、マンションの総会に限らず会議では、
議長さんの意図とその場の空気を読むことが大切。
「言うべき事は言う」なんていうのは骨折り損のくたびれ儲けで、
言っても何にもならないようならだんまりを決め込むのが最善の策。
それが本当の意味での大人というものだ。