近所のあまり手入れがされていない古いアパート。
どう考えても築50年以上には見える。
大きな地震が来ればひとたまりもなさそうだ。
ところがそんな建物にも人が住んでいる。
きっと家賃が安いのだろう。
需要と供給が一致すればそれでいいのだろうか。
塾を経営しているとき
台風が来るたびに校舎の看板が飛ばないか不安だった。
飛んだ看板で人に何かあってはいけないからだ。
災害時に於ける建物所有者の責任はどうなっているのか。
長い間、「勉強しなくては」と思い続けていた。
そんな折、ちょうどぴったりのセミナーに誘われた。
「災害時に於ける建物オーナーの責任と対策」
55歳という弁護士の江口先生
歳よりは若く見えたがその語り口は自信に満ちていた。
阪神大震災でのケーススタディから講演が始まった。
地震でホテルが倒壊し、
そこで亡くなった方の遺族が起こした裁判だった。
判例では、未曾有の災害ではあったが
増築時の工事の手抜きが原因だったから
所有者にその損害賠償責任があるとする判決がでた。
普通は、震度5に耐える耐震基準をクリアすれば
建物オーナーには所有者責任はない。
だから、震度6とか7の未曾有の地震で建物が崩壊しても
建物所有者には損害賠償責任は発生しないという。
ここで問題になるのが耐震基準なのだが
突然、「保有水平体力と必要保有水平体力との比率」などという
難しい話になり、急に眠気が襲ってきた。
それでも姉歯の問題を思い起こしながら話を聞くと
建築基準法が要求する基準は1.0で
0.5以下では建物そのものを使用してはいけないらしい。
要するに、建替えなくてはならないというのだ。
耐震改修促進法では0.6以上になるように補修をしろという。
だから、それ以下の建物だったら、絶対に損害賠償請求される。
建物を所有し、それを貸すという仕事も楽な仕事ではない。