30歳で独立した頃と今とでは、会社経営に
対する考え方がかなり変化してきている。
若い頃は、「社員よりも早く出社して」とか
「誰よりも遅くまで会社に残って」などと考えて
いた。それが理想の社長像だと錯覚していたから。
しかし、あれから40年以上の歳月が流れ、
まるで正反対のやり方が会社を伸ばすという
ことが分かってきた。つまり、会社には出来る
だけ行かないで、社員に会社を任せた方が
会社がより成長することを知ったのだ。
社員数50人くらいまでの会社では一人一人
の責任が大きいので、一人が問題を起こすと
かなり致命的な影響を受ける。こんなとき、
会社を任せていれば、社員同士が話し合って
上手にやりくりしてくれるのだ。
もしそんな時に社長がいちいち口を出している
と、みんながそれを当てにして、社員の問題
解決能力が育たない。それに初めて気付いた
のが独立して10年目の40歳ぐらいのときだった。
社長は、会社のこまごましたことを知らない方
が会社を伸ばせるなんて、若い時には全く想像
すら出来なかった。もちろん、知らないで任せて
しまうにはかなりの勇気がいる。下手をすれば、
倒産するかも知れない。しかし、倒産を恐れて
いるくらいなら初めから会社経営なんてしない
方がいい。
独立するときには、誰もが「バラ色の夢」しか
見ていない。そもそもこれが間違っている。
身を粉にして頑張っても、激しい世の中の
変化の中で、倒産を避けられないことだって
予測しておかなければいけない。今のコロナ
ショックがその典型だ。
経営者は常に死を意識して今を生きていかなけ
ればいけないのと同じように、常に倒産を意識
して会社を経営しなければいけないと思っている。
会社経営なんて始めからそんな甘いものでない
ことを今回のコロナショックが教えている。
それでも、私が会社経営を目指すのは、
「街をこんな風に作り上げたい」という夢が
会社を興すことでしか可能にならないからなのだ。