管理組合道場(2)

「なぜ無報酬の管理組合活動をあちこちで引き受けるの」
こんな質問をよく受ける。
もちろん人間を磨くためだけではない。
人生最後の社会貢献のためだけでもない。

私の不動産収入の一部がマンション店舗から入ってくるので、
いいかげんな管理をやられたら大変なとばっちりを受けてしまう。
その意味では命がけで、輪番制の理事さんとは気合が違うのだ。

そんな立場で臨む理事会での人間観察は実に面白い。
法律的な知識や建築的な知識を持ち合わせない理事さんたちは
実に言いたい放題で、人間性丸出しで討議が行われることも多い。

私のような「マンションをよくしたい」という純な人ばかりではない。
「あの人の提案だから反対だ」という不純な場面もよくあるのだ。
そして、彼らの中にはそれなりに社会経験を積んでいる人もいて、
根回しまでしてくる猛者もいる。

だから、どんなに素晴らしい提案でも棚上げされてしまうことがある。
そんな時には、本当に「ここは素晴らしい道場だ」と感謝する。
国会議員にならなくとも、駆け引きの基本を学べるのだから。

気に入らない提案を潰すには、正面から反対せず、
逆に最初は好意的な態度を見せるのが上級者だということも学んだ。
そして、非常に重要且つ重大であるという問題にすり替える。
更に、哲学だとか理念だとか科学性といった抽象論にもっていき、
最後にはうやむやにしてしまう。

また、いくら重要な問題でも、理事にとって面倒くさいことは禁物だ。
理事の多くは何事も無く一年が過ぎることを願っているのだから。
たとえそれが数百万円、数千万円の損失であっても。

屋上ルーフィングの欠陥工事の責任追及のときも、
事が余りにも重大すぎて、理事全員が沈黙してしまった。
その空気を読んだ私は、彼らが可哀想になり二の矢を放てなくなった。
まあ、最終的には私の利益に関係ないからと私も矛を収めてしまった。

Kマンションのように私の収益に大きくは関係しない理事会では、
ただひたすらそんな面倒くさがりのメンバーの人間観察を楽しむ。
むきになって徒党を組む相手と対峙しても一銭にもならないのだから。

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